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肺炎予防には口腔ケアが重要です

・肺炎と口腔ケアの重要性

今回は肺炎予防における口腔ケアの重要性についてお話しさせていただきます。
日本人の死亡原因の上位は、これまで悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患が上位を占めていました。
平成23年には、肺炎が脳血管疾患と並び死亡原因第3位になりました。

主な死因別死亡数の割合(平成23年)
出典: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai11/kekka03.html

肺炎の中でも65歳以上の高齢者に限っていえば、その大半は誤嚥性肺炎と言われています。誤嚥性肺炎の原因は、お口の中の細菌である口腔常在菌です。
そのため、お口の中の口腔常在菌を減少させるためには、お口の中を清潔に保つための口腔ケアを行うことが重要です。
下図を見ても分かるように、口腔ケアを行うことにより約10%も誤嚥性肺炎の発症を減少させることができます。

出典:要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究、日本歯科医師学会会報誌2001

また、最近の東京大学の研究発表によれば、癌手術後の肺炎発症率と術後30日以内の死亡率は、歯科医による口腔ケアを受け患者では受けない患者と比較して、有意に低いとの報告がなされています(術後肺炎の発症率は3.8%→3.3%、術後30日以内の死亡率は0.42%→0.30%)。
以上の報告からも、誤嚥性肺炎の予防に対する口腔ケアの必要性が認められてきています。

・口腔ケアとは

口腔ケアには、2つの種類あります。
1つ目は「器質的口腔ケア」です。
これは歯垢や食べかす等を除去することにより歯や入れ歯、口腔内、舌の清掃を行ってお口の中の衛生状態を改善させ、細菌叢を正常化するものです。
2つ目は「機能的口腔ケア」です。
これは飲み込む力などの口腔機能を維持・向上・回復するためのものです。
機能的口腔ケアは、お口のリハビリテーションにもなり、特に加齢等によって飲み込む力が減少する摂食嚥下障害の予防にも大きく寄与します。

出典:https://www.8020zaidan.or.jp/magazine/start_care01.html

・摂食嚥下障害

ご家族の中で、お食事の際にむせたり、咳が出るといった症状がある方はいらっしゃいませんか?
このような場合には「摂食嚥下障害」が考えられます。
食事に時間がかかる、食べると疲れる、食後に痰が出る、食事を摂ると声が変わる、食べ物が口からこぼれる、飲み込んでも食物が口の中に残る、食べ物がつかえるといった症状が見られる場合も同様です。
また、気付かないうちに誤嚥しているものに「不顕性誤嚥」があります。
これは睡眠中に無意識のうちに唾液が気道に流れ込み「咳き込み」や「むせ」などの反射が見られず、気づかないうちに誤嚥しているのが特徴です。

・摂食嚥下障害の検査

摂食嚥下障害を発見するための検査には、簡易検査(スクリーニング検査)と精密検査があります。
簡易検査では、質問票の記入や実際に食物を食べていただき、その状態を観察する検査を行います。
これにより摂食嚥下障害が疑われる場合には精密検査が行われます。
精密検査には、嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE)があります。
嚥下造影検査(VF)は、エックス線を用いて透視化で造影剤を含んだ検査食を食べてもらい摂食嚥下の動作を観察していく検査です。
嚥下内視鏡検査(VE)は内視鏡を用いるため、口腔内から咽頭にかけての観察ができ、嚥下中に食塊が通過する様子や、喉頭、咽頭に残存していないか、誤嚥していないかなどを、直接目で見て確認することができます。

嚥下内視鏡検査(VE)では、鼻咽腔喉頭ファイバースコープという機械を用いて検査を行います。鼻から細い管を挿入し、普段食べたり飲んだりしている物を摂取してもらい直接咽頭の様子を観察していくことができます。

嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE)を比較したときの嚥下内視鏡検査(VE)のメリットを説明すると、
①大きな機材ではないため持ち運びすることができ、訪問診療などで自室でも行うことができます。
②特別な検査食などではなく、普段皆さんが口にしているような食べ物や飲み物を使って検査することができます。
③粘膜や分泌物、残っている食べかすなどの評価ができます。
④エックス線を使用しないため、被爆しません。

またデメリットとしては、
①食べ物を噛んでいる間(咀嚼中)や、食べ物が食道を通過しているとき等は観察することができず、観察できる場所が咽頭に喉頭限定されます。
②飲み込んでいる最中(嚥下中)では画像が真っ白になってしまうため(ホワイトアウト)嚥下の観察はできません。

みなさまの中にも、ご自身や身近な方に摂食・嚥下障害の症状がみられる方がいらっしゃるでのはないでしょうか?
以上の症状がみられる場合には、なるべく早く口腔リハビリテーション科や摂食嚥下リハビリテーション科のある病院や歯科医院を受診し検査を受けることをお勧め致します。

歯科医師 大野真季

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