先日ある患者さんが久しぶりにお越しになり、「自分は糖尿病なのだけれども、かかりつけの内科の先生から、歯周病の治療をきちんとしないと糖尿病が悪くなるから歯科にもちゃんと通ってくださいと言われて来たんだよ。」とおっしゃいました。
受診をすすめてくださった内科医の先生も、きちんと来院された患者さんも、歯周病と糖尿病が深い関連があるという最新の研究結果を受けとめ即行動に移され、とても素晴らしいと感じました。
といいますのも、先月9月22日の朝日新聞の1面の記事によりますと、厚生労働省の国民健康・栄養調査において、国内の高齢化が進んだことにより糖尿病予備軍は減少したものの、糖尿病が強く疑われる「有病者」が推計で1千万人に増加しており、そのうちの約23%は治療を受けていないらしいのです。
糖尿病とは、慢性的に血糖値が高くなる病気で、初期には症状がほとんどありませんが、血糖値が高い状態が続くと痛みやしびれ、感覚が鈍くなる、感染が起きやすくなるなどの症状が出始め、網膜症による視力低下、腎不全や尿毒症、脳卒中、心筋梗塞などと多岐にわたる合併症により命を脅かす疾患です。
医師の指導のもと、食事療法、運動療法、薬物療法など適切な治療を行い、血糖の状態を表す指標である「ヘモグロビンA1c」の値を低くコントロールする必要があります。
さて、近年の研究で、歯周病は糖尿病と相互に悪い影響を及ぼしあい、歯周病があると糖尿病の血糖コントロールが難しくなることがわかっています。
なぜ糖尿病と歯周病が関連しているのでしょうか。
歯周病は、日本人のほとんどが罹患しているといわれている感染症で、歯の表面や歯と歯肉の間で増えた歯周病菌が増殖し、歯肉に炎症を起こし、歯を支えている骨を溶かし、ついには歯が抜け落ちていく病気です。
歯周ポケットにいる細菌は血管内に容易に入りこみ、全身に回ります。
細菌の細胞壁に含まれる内毒素(エンドトキシン)が排出され、血液中の糖分の取り込みを抑えるTNF-αの産生を亢進するため、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔します。
これが糖尿病に悪影響を及ぼす理由です。
また反対に、糖尿病の方は健康な方の約2倍も歯周病が悪化しやすいことがわかっています。
高血糖で多尿になり口渇がおき口腔内で細菌が繁殖しやすい、菌に対する抵抗力が弱く感染しやすいためと考えられています。
歯周病治療は、歯垢や歯石を徹底的に除去します。
ご自身での毎日のブラッシングが重要なことはいうまでもありませんが、歯周ポケットの深いところや硬くなってしまった歯石は自分では取り除けませんので、歯科治療と患者さんの毎日の口腔ケアの「両方」が重要です。
歯周病は自然治癒することがありませんし、ある程度進行すると「歯肉や顎骨が元通り完全に治る」ということもありません。
良好な状態を維持するということが治療の目標になります。
ですので、定期的なメインテナンスが不可欠です。
一生うまくつきあっていかなければならない慢性疾患です。
ぜひ、気軽に相談できるかかりつけの歯科医院をみつけてください。
歯科医師 富永克子
2017年10月18日 カテゴリ:未分類