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アーカイブ: 12月 2017

OAM大口式インプラント法ベーシックコースに参加してまいりました

皆様こんにちはいかがお過ごしでしょうか。
秋の行楽シーズンも終わり、町中が色とりどりのイルミネーションで飾られるクリスマスシーズンになってまいりました。暖かくして、夜の散歩に行きたくなる季節ですね。

私は、今年の7月に(株)エイペックスメディカ主催の大口式インプラントシステムの女性 限定のセミナーに参加させていただきました。

当初、女性歯科医師に向いている大口式と お聞きして、勝手に体力的に労力を要さない術式だと思い込んで参加してしまったのですが、その講習会を受けさせていただいた結果、全く違った意味で女性に向いているという事を学びました。
百聞は一見に如かずです。

講師の山口葉子先生は現在、昭和大学歯学部インプラント歯科学講座で講師をされていて、 歯科大病院での臨床、学生への指導、並びに私のような一般歯科医師へのご指導も多忙な中、時間を割いて下さってます。
大変、頼りになる先生でございます。

インプラントの埋入窩を形成する方法としては、世界中でもドリリングにより骨を切削していく方法が一般的です。
インプラントシステム発祥の地は欧米であり、このドリリングによる方法は大きく頑強な骨格を有するアングロサクソンやゲルマンには適した方法と言えるでしょう。
しかしながら、我々モンゴロイドは前者よりも脆弱な骨格を有しており、このドリリング方式では対応できない症例が多々あります。

さらに、欧米と日本を比較すると抜歯に至るまでの期間にも差があると思われます。欧米では割と早期に抜歯の決断をする傾向がありますが、日本では民族性の違いからも歯周病や根管治療をできるだけ試みて、出来るだけ歯牙を保存しようとする傾向があります。
それ故、最終的に抜歯になってしまった場合、残された周囲の骨はより脆弱になっている場合が多いようです。

理想を言いますと、インプラント物を埋入するには、顎骨に十分な骨量があり、しかも骨質が密でなければなりません。
しかしながらこのような条件を満たす歯槽骨が少なくなってきているのが現状です。

そこで考え出されたのが、ドリルを使用せずに骨をできるだけ削らない方法でインプラント埋入窩を作成していく方法です。
このインプラントシステムが東洋人に適した術式であるとお考えになり、より安全で低侵襲にこだわった埋入テクニックを開発されたのが岐阜県の大口弘先生です。

OAM (大口式) インプラントシステム

大口先生は以前より、脆弱、または狭窄した骨への対応法としてドリリングをせずに、オステオトーム、コンデンサー等によって海綿骨をコンデンスしながら埋入窩を形成していく方法を実践されていたそうです。
しかし、一般的なオステオトームなどの器具は挿入時の抵抗が大きくマレッティングの必要があり、骨頂部の裂開を引き起こすという問題がありました。

そこで独自に開発されたのが、0.2mmごとにサイズアップさせたオーギュメーターです。
前歯部用、臼歯部用各16本から構成されます。(最小直径が0.5mm最大直径は3.6mm。)

基本術式

OAMインプラントシステムのプロトコルは、起始点の形成 (Marking)、リーミング (Reaming)、そしてエクスパンディング (Expanding) による床形成という「M-R-E シン プルシステム」が基本となり、インプラントの埋入手術が実行されます。

今回のベーシックコースでは豚骨を使用して実習を行いました。

【Marking 皮質骨の穿孔】

多くのインプラントシステムのプロトコルではイニシャルドリルが直径2.0mm程度にな るのに対し、この方法は骨頂部に0.7mmのマイクロイニシャルバーを用いてピンホール を設けます。

【Reaming リーミング】

市販のリーマーもしくはKファイルを使用して骨内の状況を把握する。

【Expanding 骨幅拡大】

オーギュメーターを使用して一段階ごとに穴を拡大していきます。

ドリリングの場合、骨頂部が削除され垂直的骨量が低くなるのに対し、オーギュメーターを使用する方法では骨頂部を拡げることにより、骨頂部が削除されないため垂直的骨量の維持、もしくは増加が期待できるという驚きの副産物もあるそうです。

また専用のツールはリーマー、ファイルのように指先で保持して反転運動させて使用するため、日ごろの慣れた感覚でインプラントオペを行っていけるという安心感があります。

リーマー、オーギュメーターには皮質骨を穿孔する能力が無いため、解剖学的に危険な領域をPerforationする可能性が少ないというのも安心して行える術式と言えます。

この様な指先の繊細な感覚を使いながら埋入窩を作成していく術式が女性に向いていると考えられる所以でしょうか。

まずはこの基本的術式を山口先生のご指導に従い一通り練習させていただきました。
スッテプごとに丁寧にオーギュメーターを使用して骨を拡大していきます。

その作業は上顎などの骨質の柔らかい部分には無理なく進めていくことができるそうですが、下顎の骨などで硬い骨部分にはドリルを併用して削合するハイブリッド法を教えていただきました。
実習では豚骨の軟らかい部分と硬い部分の両方で練習させていただきました。
骨の硬さをタイプ別に分類して下さったのがありがたかったです。

OAMインプラントシステムは骨幅の違いにより術式を分類します。
埋入部位の歯槽骨板が脆弱骨で幅広の場合と狭窄骨の場合と2つに分けて考えることが重要だそうです。

狭窄骨の場合は拡大し、それ以外の場合はコンデンス、海綿骨移動術を試みます。
これら術式の最大の目的は、既存骨を出来るだけ削らずに埋入窩を作成することです。

狭窄骨拡大をする事および海綿骨移動により、GBRの回避、または大掛かりなGBRを軽微にすることができます。
また、コンデンスにより初期固定獲得が可能となります。

OAMインプラントシステムの最大の特徴は、外科的侵襲を最大限に抑えて術後の腫脹や疼痛を極力抑える事ができ、何よりも安全な方法であるということです。
また縦切削をしないため4壁性のインプラント床となり血餅の保持が容易で初期固定も良好で血液供給も豊富であるため、予知性の高いインプラント埋入術となるそうです。

確かに私のような女性の歯科医師でも、この安全な方法でならインプラントオペをしてみてもいいかな?という気になりました。
もちろん、山口先生にご指導いただいて分かったことは、大多数の症例はまずドリリング法で行っているそうです。

まずは一般的な症例はドリリングで初めてみて下さいとご指導されました。
実際に、オーギュメーターを使用して骨を拡大していきましたが、1つ1つのステップが多いので、途中で疲れました。
山口先生も硬い骨への対処法として、ハイブリッド法を薦めて下さいました。
無理なく挿入できる深度までオーギュメーターを挿入し骨頂部のみを拡大します。
その後骨頂部よりも細い径のドリルでインプラント長まで形成します。

機械と手動をうまく組み合わせる事によって時間も短縮され、術者と患者様、両者への負担が減り効率的にオペが進められるということでした。

硬い骨への対処法として言えることは、無理な力は使わずに術式を切り替えることだそうです。
ステップバック、ジグリング、ハイブリッド、ボーンスリッティング法が挙げられます。

さらに、様々なテクニックに改良を重ねた結果、前歯部抜歯窩即時埋入法、前歯部狭窄骨に対する大口式オメガスリッティング法、また上顎洞に近接した部位にフィクスチャーを埋入するソケットリフト法など難症例に対応すべく素晴らしい術式が実践されています。

インプラント治療の難しさ、また難しい症例を何とか成功させていこうとする講師の先生方の努力と熱意が伝わる非常に有意義なインプラント講習会でした。

患者様にとっても、非常に安全な方法だと思いました。
今回この講習会に参加できて本当に満足でした。

歯科医師  大庭美和子

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